忘れてた
どなただったか忘れてしまったけれど、あるタカラジェンヌが
「お稽古中も公演中も朝劇団入りして夜出てくると、もう日が沈んでいて季節を感じる時間がない」「ふと花が咲いているのを見つけると幸せを感じる」
と言っていた。
想像力のない私は当時、それがどういうことか想像つかなかった…
そして昨年社会人になり、1日の多くの時間を職場で過ごすようになった。
朝 会社勤めの人と同じくらいの時間に職場に着き、夜 会社勤めの人と同じくらいの時間に電車に乗る。
ただ違うところは、職場は電飾によって1日中同じ明るさで 空調によって1年中同じ気温だということ。
アパレルの販売員なのに夏の暑さも、冬の寒さもほとんど分からないまま過ごしていた…
さらに新卒1年目のうえに、生きるのがとてつもなく不器用な私はできない自分を責めて、追い込んでしまっていたため、季節を感じる余裕なんて とてもじゃないけど持ち合わせていなかった。
今年4月 2年目になった。後輩も入ってきた。
いよいよ自分も先輩になるんだ!と意気込んでいたところに、辞令が出た。
あまりに急なことで1年間お世話になった店舗にも、未だに挨拶もできていない。
しばらくは短期間で色んな店舗に行くことになる…そうだ(まだ正確には分からないが)
今通っている職場、今までとはモノもヒトもウツワも違う。
経験も知識も何もない私には至らないことばかりだ。
ただ 1年いかにちっさな世界で苦しんでいたか気づくことができた。
同僚たちは出身も違えば、経験したことも様々で 経歴を聞くうちに 辞令への不安も少しずつ和らいでいった。
上司にあたる方も「今できることを最大限にやって、思いっきり楽しんで」と背中を押してくれた。
今できることをやって 今いる場所だからこそ楽しめることをしようと思った。
お昼休みに海の近くまで行った。
海風が気持ちよかった。潮のにおいがした。
夕方休みに外のベンチに腰掛けてアイスを食べた。
夏になる前の心地よい風が吹いていた。
雲のすきまから見える青い空が綺麗だった。
これが幸せだ、と感じたとき あのタカラジェンヌの言葉を思い出した。